カルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社
代表取締役社長兼CEO
髙橋 誉則
日販グループホールディングス株式会社
代表取締役社長
富樫 建
Profile
富樫 建 1999年日本出版販売株式会社入社。2015年新しい書店空間の価値創造を目指し新設されたリノベーショングループを担当。16年同部長、書店さまのリノベーションに取り組むと共に、本の価値を新しい形で伝える場として17年に箱根本箱、18年に文喫 六本木を立ち上げ。20年取締役、21年常務取締役、23年専務取締役。24年より日販グループホールディングス株式会社代表取締役社長。25年より日本出版販売株式会社代表取締役社長を兼任。
「映画も音楽も本も、ぜんぶ一つの店で楽しめる」というTSUTAYAを実現するには、書籍流通を担う日販さまとの出会いが不可欠でした。1986年の業務提携を通じて、ベンチャー企業だったCCCに多大なるサポートをいただきました。両社の出会いから約40年。なぜ二社の絆は強くなり続けているのか。日販グループホールディングス・富樫社長と語り合います。
それは運命の出会いだった。
日販グループホールディングス(以下日販)さまとカルチュア・コンビニエンス・クラブ(以下CCC)は、もう40年近いおつき合いになります。最初の出会いはどのようなものだったのでしょうか?
富樫 1983年に大阪府枚方市にTSUTAYAの1号店がオープンされましたが、「映画と音楽と本が1つのお店で手に入る、カルチュアを手軽に楽しめる店をつくろう」という増田さん(※)の構想の中には、本を仕入れて店頭に並べることが欠かせない一部としてありました。書籍の流通を仲介する私たち出版取次会社とは、その流れで知り合ったようです。
※カルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社の創業者であり、現取締役会長である増田 宗昭。
髙橋 そして1985年に、日販さまの当時の商品開発部長だった鶴田尚正さん(※)と増田がはじめて出会った。両社内で語り継がれている「運命の出会い」ですね。
※2000年代に日本出版販売の経営にあたっていた、元会長の鶴田 尚正さん。
富樫 会うなり鶴田は増田さんの、増田さんは鶴田の魅力に強く惹かれたそうですね。
髙橋 その後、鶴田さんが「よし、CCCに賭けよう」と決断して、業務提携を結んでくださったのが翌年の1986年。鶴田さんの言葉を借りると、その業務提携は「二人で婚姻届を出した」ような瞬間だったといいます。二社の共創がすごいスピードで展開していったわけですね。当時のCCCはベンチャー企業らしく勢いはあるけれど、社会的な信用は不十分という状況でした。そんな私たちを日販さまが強力にバックアップしてくださったおかげで、加速度的にビジネスを拡大できた。日販さまの取引先である書店さまを、TSUTAYAフランチャイズ(以下FC)加盟店としてたくさんご紹介いただいて。私たちにとって日販の皆さんは、「パートナー」と呼ぶには陳腐な表現に思えるほど、本当に得がたい存在です。
「約束と感謝」の大切さを、恩人に教えてもらった。
富樫さんのお手元の本は、増田の著書『増田のブログ CCCの社長が、社員だけに語った言葉』ですね。増田が、社内ブログで10年間つづり続けてきた文章を書籍化したものです。
富樫 はい、今日は私の大切な一冊を持ってきました。日販の社外取締役も務められた増田さんは、私たちにとって憧れの存在です。この本は、仕事論・組織論・経営理念など縦横無尽なテーマで読んでいて飽きないし、社員のためだけに語った貴重な話を外部の人間も読めるなんて本当にぜいたくです。
髙橋 それを聞いて、以前増田が話してくれた、CCCが急成長を始めた当時のエピソードを思い出しました。二人が出会ってまもなくのある日、増田の用事が立て込んだせいで鶴田さんとの約束に間に合わず、2時間ほどお待たせしてしまったそうです。後日、鶴田さんから長いお手紙をいただいた増田は、示唆に富む内容に涙すると同時に、自らの過ちにハッと気づいた。以来、自戒を込めて「約束と感謝」を大切な言葉として掲げ、社員にも繰り返し伝えるようになりました。
富樫 多忙なときこそ、周りとの関係性を大切にする。忘れてはいけないことですね。
髙橋 CCCがこうして40周年を迎えられるのは、鶴田さんをはじめ尊敬する方々の導きと支えがあったからこそ。それを強く感じるエピソードです。
出版業界を根本から変えた、ふたつの出来事。
富樫社長にご質問です。これまでのCCCとの取り組みの中で、特に出版業界に新しい価値をもたらしたプロジェクトについて教えてください。
富樫 出版業界にとって大きなターニングポイントとなったプロジェクトを挙げるなら、ひとつ目は2006年にCCCとの共同出資で流通の新会社「MPD」(※現在はカルチュア・エクスペリエンス株式会社)を設立したこと。もうひとつは2011年に「代官山 蔦屋書店」が誕生したことですね。MPDは日販のTSUTAYA向け商物流事業部門を分割してつくった会社で、増田さんと鶴田の絆によって生まれた「子ども」のような存在です。TSUTAYAと一般店舗へのオールインワン物流をはじめ、業界初の画期的な取り組みを実現しました。そして「代官山 蔦屋書店」は、書店の概念を変えたという意味で歴史的な出来事といっていい。日本が誇る書店の代表作が生まれた瞬間で、出版業界へのインパクトもすさまじいものがありました。
髙橋 MPDの設立は両社の絆の結実という面に加え、鶴田さんが来たる出版市場の縮小を見据え、状況を打破するために乗り出した改革のように思えてなりません。一般的にイノベーションは、「業界トップの大企業が新興企業の前に力を失う」というジレンマを内包しています。それを理解していたからこそ、鶴田さんはわれわれのような新興企業と組むことで、外部からの圧力をテコにして自社および業界全体に変化をもたらそうとしたのではないでしょうか。
富樫 はい、きっとそんな狙いがあったはずです。実際、二社の数々の共創が功を奏して、出版流通の取引形態や書店の店づくりといった業界の常識が、根本から変わり始めました。時間が経つにつれ、その変化の波が隅々まで及んでいるのを感じます。それにしても時代がこんなに激変しているのに、両社の関係がこの40年間、どんどん深まり続けているのは興味深いですね。
髙橋 本当に。土台には固い絆がある一方、チャレンジのテーマはその時々で様変わりしていますからね。加えて、両社の絆は決して二社間の閉じたものではなく、日本中のTSUTAYAのFC加盟店の皆さまとも手を取り合い、一緒にここまで歩いてくることができた。私にとっては何よりうれしいことです。
出版業界全体を盛り上げ、刷新するために。
お二人にご質問です。今、出版業界は大きな変化の時期に直面しています。両社がタッグを組むことで、これから先、どんな変化を起こしていきたいですか?
富樫 起こしたい変化はたくさんあります。すでに始めているチャレンジをお話しすると、急成長中のSHARE LOUNGEを日販のサポートによってさらに大きく育てたいというのがひとつ。また、海外のモデルをベースにした商取引形態の実現や、他社と力を合わせた出版流通改革も進行中です。
髙橋 他社と力を合わせた出版流通改革とは、日販さま・紀伊國屋書店さま・CCCの三社が共同設立した株式会社ブックセラーズ&カンパニーのことですね。
富樫 はい。ブックセラーズ&カンパニーは街に書店が在り続ける未来のために、書店チェーンの枠を超えた横断的な協力により、「書店主導の出版流通改革」を実現しようという壮大な試みです。具体的には、書店と出版社間の直接取引や適正な仕入れを行うことにより、現在、出版業界が抱えるさまざまな課題に応えていきます。2023年に始動したばかりですが、業界に新しい風を吹き込む突破口になりそうだと、手応えを感じています。
髙橋 これから出版業界全体をいかに盛り上げ、刷新していくか。それには自社のビジョンを追いかけ、成長するだけでは不十分です。私は「個々の企業が頑張って強くなる部分」と「出版取次会社も書店も垣根なく、みんなで協力しながら一緒に変わる部分」の両輪が必要だと思っています。この両輪がしっくりと噛み合って回ることが、ブレークスルーにつながるのではないでしょうか。紀伊國屋書店さまとタッグを組んだブックセラーズ&カンパニーは、そのひとつの表れといえますね。
富樫 同感です。CCCの皆さんには、企画力はもちろん、尖ったセンス、豊かな発想、大胆な実行力など、私たちにはない強みがたくさんあります。そんなCCCの独自性と存在感が、業界全体にとっていいスパイスになっているのは間違いありません。皆さんをがっかりさせないよう、われわれ日販チームも緊張感をもって成長しなければ。
髙橋 そんなふうに言われると、こちらが緊張してしまいますよ。日販さまこそ「堅実・信用」という基盤を築くと同時に、ブックホテル「箱根本箱」やオフィスの新たな可能性を形にした「オチャノバ」など、祖業の取次事業以外にも、イノベーティブな事業を次々に仕掛けていらっしゃいますよね。皆さんのチャレンジマインドは、私たちCCCにとって最高の刺激になっています。
出会いを信じて突っ走って。その先に未来があるから。
最後に富樫社長、これからを生きる若い世代に伝えたいことはありますか?
富樫 今、私たちは昨日の常識が今日の非常識になってしまうような、移り変わりの激しい時代を生きています。だからこそ出版業界で働く若い世代には、日ごろから海外の動きに目を向けたり、他の産業界の方の話を聞いたりなど、高いアンテナとオープンな姿勢で出版に携わってほしいですね。最近、「多様性の時代」とよく言われます。多様な社会における出版とは、まず何より、自分とは異なる価値観、自分の知らない世界に対して好奇心を抱くところから始まるのではないでしょうか。
髙橋 私も同じ気持ちです。出版業界以外の若い世代には、何を伝えたいですか? 最近さまざまな分野で、勢いのある個性的な若者たちが目覚ましい活躍をしていますよね。
富樫 情報が氾濫し複雑さを極めた今の時代は、リスクを気にするあまり、最初の一歩が踏み出しづらくなっていると思うんです。けれど、今日お話しした増田さんと鶴田のように、もしインスピレーションを感じる出会いが訪れたら、直感を信じ、相手を信じて突っ走ってほしい。人と人との一期一会には計り知れない力が秘められていて、思いもかけない展開に遭遇したりもします。人生、一度しかないので、後悔のないよう生き切ってください。私たちもCCCの皆さんとともに、この時代を駆け抜けていきます。
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