
カルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社
代表取締役社長兼CEO
髙橋 誉則
株式会社三井住友フィナンシャルグループ
取締役 執行役社長 グループCEO
中島 達
Profile
中島 達 1963年9月14日生まれ、愛知県出身。1986年に東京大学工学部を卒業後、住友銀行に入行。新横浜法人営業部長、リテール統括部長、経営企画部長などを歴任し、2019年に三井住友フィナンシャルグループ取締役執行役専務グループCFO兼グループCSO、2023年に同執行役副社長ホールセール事業部門共同事業部門長を経て、同12月に執行役社長グループCEOに就任。
2024年5月に開業した「Olive LOUNGE渋谷」は、銀行とカフェ、SHARE LOUNGEが融合した新しい銀行の形として、SMBCグループとCCCグループの共創によって誕生しました。その取り組みの背景や、両社が追及し続ける「顧客価値」について、三井住友フィナンシャルグループの中島社長とCCC髙橋が語り合います。
「日常の中に溶け込む銀行」をつくりたかった。
2024年5月に、三井住友フィナンシャルグループ(以下SMBCグループ)さまとカルチュア・コンビニエンス・クラブ(以下CCC)の共同プロジェクトとして「Olive LOUNGE渋谷」が開業して以来、1年以上が経ちました。未来の銀行のあり方を提案する空間として注目を集めていますが、プロジェクトの発端を教えてください。
中島 確か2023年ごろ、今話しているまさにこの部屋で、増田さん(※)が「渋谷の店舗、今度建て替えると聞きました。ぜひCCCにやらせてもらえませんか」とおっしゃったんです。「こうすれば、みんなが集まる楽しい空間になる!」と構想を熱く語ってくださって、「じゃあ、まずは渋谷支店でやってみましょう」と答えたのを覚えています。
※カルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社の創業者であり、現取締役会長である増田 宗昭。
髙橋 そうでしたか。その後、ご好評をいただいて、もう8店舗(※)もできましたね。
※2025年9月現在。
中島 そうなんです、あっという間に。そもそも「Olive」とは、2023年にローンチした個人のお客さま向けデジタル総合金融サービスのことで、銀行口座・カード決済・オンライン証券などの機能がスマホひとつで完結できます。「Olive LOUNGE渋谷」は、このOliveアカウントのご契約者を中心に銀行の店舗スペースを広く開放し、多目的に過ごせる場所にしようと計画しました。
髙橋 店内には銀行のほか、SHARE LOUNGEとスターバックスが入っていて、通常の銀行の機能に加え、オフィスやカフェとしても利用できます。CCCはこれまでも、書店や図書館などさまざまな業種で「人の集まる場」をつくってきました。そのノウハウを今度は銀行の領域に応用して、新しい銀行のカタチを提案できないか。そんな発想からスタートしました。


中島 皆さん、銀行というとお堅く近寄りがたいイメージがあるでしょう。そうした印象を打破しようと、SMBCグループでは「カラを破ろう。今こそ“開かれた銀行”に変わるときだ」と従業員に呼びかけてきました。Olive LOUNGEは、そんな私たちの変革への想いが見事に具現化されたスペースだと、できあがった店舗を見て実感しました。銀行のイメージを根底から覆す、素晴らしい場です。
髙橋 「Olive LOUNGE渋谷」オープンの時に中島さんが、「これまでの銀行は“わざわざ行く場所”でした。これからは“いる場所”になります」と宣言なさった通りの空間になりましたね。まず何より「ただいるだけで楽しい場所」であること。そのうえで「必要な人は銀行のカウンターにも立ち寄れますよ」と、こういう順番ですね。
中島 CCCの皆さんはずっと、お客さまに「快適さ」と「楽しさ」を届けてきましたよね。一方、われわれが始めたOliveは「便利さ」と「おトク感」をお届けしたい。Olive LOUNGEはそんな互いの価値観がフィットした、共創の成功例です。その結果、お客さまとの距離がグッと近くなって、本当にうれしく思っています。

TポイントとVポイントの統合で、一気に広がる可能性。
「Olive LOUNGE渋谷」がオープンする前月の2024年4 月には、CCCのTポイントとSMBCグループさまのVポイントが統合し、「青と黄色のVポイント」が誕生しました。
髙橋 共通ポイントの草分けだったTポイントは、2003年に産声を上げたあと、20年かけて年間7,000万人のお客さまにご利用いただく共通ポイントサービスへと成長しました。今回、SMBCグループさまとの統合で決済機能が加わり、1億店に上る世界中のVisa 加盟店でも利用できるようになりました。
中島 20年以上前からデータベースマーケティングを切り拓いてきたCCCの先見の明には、目を見張るものがあります。両社が保有するデータはそれぞれ特徴があるからこそ、掛け合わせることで何が見えてくるのか、とても楽しみです。
髙橋 CCCが保有するのは、飲食・小売店や専門店などのライフスタイルに関わるデータが大半であるのに対して、SMBCグループさまが保有するのはカード決済にまつわるデータです。つまりそれは、「日常生活における仔細な行動データ」と「人生という長いスパンにおける大局的な行動データ」とも言い換えられますね。カード決済のデータは、結婚して、子どもが生まれて、住宅を購入して…など、お客さまのライフステージの変化を見つめることができる貴重なデータです。そして、このライフステージへの理解が、次の企画・次の提案のヒントになるんじゃないか。そんな予感にワクワクしています。

中島 先ほどお話しした「Olive」は、「金融サービス+α」の価値をお客さまにお届けする、今までにない切り口のサービスです。現在、総力を挙げて新規口座獲得のプロモーションを行っていますが、Vポイントの統合による会員数の拡大がその起爆剤になるに違いありません。将来的にはOliveご契約者の増加によってVポイントのデータがさらに充実し、データベースマーケティングもまた一段と進化する。そんな好循環サイクルをつくれたら最高です。
チームになって、ひとつのボールをつないでいる。
中島社長にご質問です。SMBCグループとして、これから未来に向けてどんな価値を創造していきたいですか?
中島 私たちは常々、「経済的価値」と「社会的価値」を両輪で創造したいと考えています。商品・サービスを通じてお客さまに喜んでいただくことで経済的価値を創造する側面と、たとえ短期的には財務上プラスにならなくても、世の中のためになることをやっていこうという側面です。それらの積み重ねによって、お客さまや社会とともに発展するグローバルソリューションプロバイダーを目指したい。それが私たちのビジョンです。

髙橋 「グローバルな金融機関」ではなくて、「グローバルソリューションプロバイダー」なんですね。
中島 はい、そこがポイントで、お客さまや社会の課題を解決するためなら金融機関の枠にとどまらず、非金融も含めた活動を広くやっていこうと、そういう意気込みです。ただ、自分たちでできることには限界があるので、各分野のスペシャリストと積極的にパートナーシップを築いていきたい。そんなわけで、CCCは私たちにとってなくてはならない存在です。
髙橋 中島さんはラガーマンだったと以前伺いましたが、私には今、SMBCグループさまとCCCがチームになって連携し、ひとつのボールをつないでいるという感覚が強くあるんです。目線と呼吸をしっかり合わせ、同じボールを追いかけられているな、と。そんなふうに感じるのは、両社とも「顧客価値への想い」が共通しているからではないでしょうか。企業の思惑を一方的に押しつけるのではなく、いつでも「お客さまが喜んでくださる価値とは何だろう?」と原点に立ち戻る姿勢が共通しているように感じます。
中島 私も同感です。CCCの皆さんから学ぶべきことはたくさんありますが、特に「構想力」「企画力」の面では真似のできない強みをお持ちです。おそらく人々が今、何を求め、何が足りないかを肌で感じる能力がずば抜けて高いのでしょう。だからこそ、お客さまに刺さる企画を創り出せる。Olive LOUNGEの立ち上げをご一緒して、それを痛感しました。

髙橋 ありがとうございます。私たちは未知の領域に飛び込んでいくのは得意なので、先陣を切る役は今後も任せてください。最後に中島さん、若い世代にメッセージはありますか?
中島 私は若い世代の皆さんに、充実した幸せな人生を送ってほしいと心から願っています。そして若い世代に続く次の世代、さらにその次の世代まで、日本という国が、心が豊かで幸福感に満ちた人々の国であってほしいと願ってやみません。では、そのためにどうすればよいか? まず、この国の素晴らしさを自覚することが、最初の一歩ではないでしょうか。そのうえで、未来のために今為すべきことを、われわれ世代と若い世代の皆さんで知恵を出し合い、ともに考えたい。現状に甘んじることなく、「自分たちがこの国をさらによくするんだ」と主体的に努力を重ねれば、未来はきっと明るいはずです。

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