カルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社
蔦屋書店事業本部 東日本運営部 代官山T-SITE 館長
本所優
2011年12月5日に「大人のための文化の牙城」をコンセプトにオープンした代官山 蔦屋書店を核とした文化商業施設「代官山T-SITE」は、来年で15周年を迎えます。その「代官山T-SITE」の館長を務めている本所優さんに、現在注力している地域コミュニティとの連携やサステナブルな取り組み、そして今後目指していきたいことを語ってもらいました。
本所さんのご経歴を教えてください。
新卒で入社後、店舗でCDレンタル売場の仕事を担当し、その後はフランチャイズ店舗のCDレンタル商品のバイヤーとして約3年間働きました。また店舗の現場で働きたいと志望して、「TSUTAYA 馬事公苑店」の店舗改装のプロジェクトや「代官山 蔦屋書店」のOPENに音楽フロア担当として携わりました。当時が音楽をスマートフォンで聴く黎明期だったので、スマートフォン販売の立ち上げも経験しました。その後、産休・育休を3回取得し、本格的に復職したあとは「代官山 蔦屋書店」の副店長としてアルバイトスタッフの育成や組織運営などの運営全般を担当。「代官山 蔦屋書店」の店長を経て、現在は「代官山T-SITE」の館長として施設運営全般を担当し、責任者として顧客価値の向上や新しい顧客価値の創出に取り組んでいます。
現在の館長としてのお仕事を詳しく教えてください。
施設運営に関すること全般を担当しており、施設の価値を上げるための仕事をしています。具体的には、「大人のための文化の牙城」をコンセプトに掲げ、「ライフスタイル提案型書店」、「家のように寛いで過ごせる空間」、「コンシェルジュの存在」、「敷地全体がインスパイアされる空間」など、2011年の開業から築き上げてきた顧客価値を基盤として、新しい価値を創造し、「代官山 T-SITE」が「世界一の文化発信基地」となることを目指して、さまざまな取り組みに挑戦しています。
特に最近では、書店としての価値向上、地域コミュニティとの連携、サスティナビリティの3つに注力しています。
書店としての価値向上という部分では、「代官山 蔦屋書店」における「本を通じたライフスタイル提案」をいま改めて重視し、本とともに雑貨・家電・アート作品などを展開し、さまざまなジャンルに精通したコンシェルジュが、選書・棚づくり・フェアやイベントの企画まで、丁寧に取り組んでいます。15周年を迎えるにあたり、“本のテーマパーク”という全館フェアを企画中で、「書店って楽しい!」とお客さまに感じていただけるコンテンツを準備中です。さらに、本に関するイベントの企画も積極的に行っています。出版を記念した著者によるトークイベントやあるテーマを著者と参加者で語り合うイベント、著者やアーティストのサイン会・お渡し会など、ほぼ毎日、なにかしらのイベントが開催されています。例えば絵本でいうと、「えほん博」(絵本を読む人、つくる人、届ける人が集まって絵本を楽しむイベント。絵本作家たちによるサイン会やトークイベント、絵本や雑貨、ワークショップのブースが並ぶマーケットなどを行う)や、「SFカーニバル」(日本SF作家クラブとの共催のSF愛に満ちたお祭り。SF作家たちによるサイン会や、SF書籍や関連グッズが揃うマーケット、日本SF大賞の贈賞式やSF作家・編集者による製作裏話を語るファンイベントから最新の研究発表まで、幅広いイベントを行う)といった本の文化をつないでいくことを目指した大型イベントにも力を入れています。
地域コミュニティとの連携、サスティナビリティ、というのは具体的にどういったことに取り組んでいるのでしょうか?
「代官山T-SITE」では、「持続可能な文化商業施設=お客さまに支持される文化商業施設」であり続けるために、地域に根ざしたコミュニティを作ることにも取り組んでいます。
例えば、「代官山T-SITE」が地域の中心となって企画する夏祭り「代官山 爽涼祭」は、地域の人々とのつながりを深めるためのイベントで、今年で4回目の開催となります。子どもたちに日本の伝統文化である花火を体験してほしくてはじめた「小さな花火大会」を催したり、地域のお店にお声がけして、かき氷や綿あめ、輪投げなど夏の定番の屋台を出店してもらったり、近隣の商業施設でもマーケットイベントを開催してもらったり、地域全体が盛り上がることを企画しています。
また、地域の子どもたちに自分たちが住む街をよりいっそう好きになってもらいたいという想いから、近隣の小学校に赴いて、”探求学習の授業”も行っています。児童の皆さまが「こども縁日」の出店を企画したり、広報ポスターをつくったり、地域の子どもたちの学びの場にもなっています。
さらに、今年は、地球環境の問題をはじめとする社会課題に対して、人々の行動変容を促していくきっかけになればと、サステナブルな取り組みも取り入れています。具体的には、飲食屋台の容器にリサイクル可能な素材を使用したり、規格外の野菜や果物で作ったかき氷シロップを提供したり、建築廃材・アパレル端材などサステナブル・マテリアルを活用したスピーカーの展示など、さまざまな視点でのサステナブルな取り組みが楽しく体験できます。こういった取り組みを発信していくことも、持続可能な文化商業施設の使命であると考えています。
2025年の「代官山 爽涼祭」は、人と人がつながり、人と地域がつながり、未来につながることを願って、「TSUNAGU」をテーマに、9月20日から28日までの9日間にわたって、毎日さまざまなイベントを行う予定になっています。
本所さんが仕事に向き合ううえで大事にされていることを教えてください。
「新しいことに挑戦する人を否定せずにサポートする」ことを大切にしています。「代官山T-SITE」ではたくさんの方に働いていただいているので、皆さまの良いところを見つけて伸ばしていくことを心がけています。例えば、スタッフが自由にアイデアを出し、創造的な取り組みを行うことができる環境づくりを意識していて、スタッフ自身が想いをもって取り組みたいと案を出してきたものに対しては、どうしてそれを実現したいのか、どうやったら実現ができるのか、を寄り添って考えるようにしています。それが、スタッフの成長を促し、組織全体のパフォーマンスを向上させることにつながるのではないかと思っています。この考え方は、入社1年目に先輩から教えていただいた大切なものであり、これからも大事にしていきたいと思っています。
今後チャレンジしたいことはありますか?
「代官山T-SITE」の館長としては、「代官山T-SITE」が「世界一の文化発信基地」として持続可能であり続けるために、文化という面ではクリエイターのコミュニティを創ること、地域という面ではサステナブルな取り組みを地域の皆さまと一緒に取り組んでいきたいと思っています。
「代官山 蔦屋書店」は来年15周年を迎えるのですが、それを支えてきてくださったクリエイターの皆さまと協力して新しい文化やコンテンツを創造しつづけていくために、対話ができる場所を提供したいと考えています。もともと「代官山 蔦屋書店」には「Anjin」というカフェ・バーがあり、クリエイターが集まるサロンになればという想いがありました。その想いを実現したいと思っています。また、サステナブルな取り組みについてはスタートしたばかりなので、今後も注力して進めていくことで、地域コミュニティへの貢献と社会的課題の解決を実現していきたいです。
個人としては、子どもの教育や未来に関わる仕事を続けたいと考えています。「えほん博」の開催や小学校での授業を通じて、子どもたちが多様な大人と出会うことがとても大事なことだと思っているので、続けていきたいです。実はいま、自身の子どもが通う学校のPTA活動にも積極的に参加しており、私が住んでいる地域の子どもたちのための活動も行っています。未来を作っていくのは子どもたちだと思うので、自身の取り組みを通じて、自分ができることは何でもしていきたいと思っています。