
Olive LOUNGE──
「日常に溶け込む銀行」をかたちに
SMBCグループとCCCによる、未来の銀行の在り方を提案する共同プロジェクト
2024年5月、SMBCグループとカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)の共同企画によって、新たな銀行の形を提案する「Olive LOUNGE」が誕生しました。リアルとデジタルが融合した“ハイブリッド型”店舗として、銀行の機能にとどまらず、人が集い、くつろぎ、情報が行き交う「場」として注目を集めています。
「銀行を“わざわざ行く場所”ではなく“自然にいる場所”にしたい」──そんな想いから生まれたOlive LOUNGEは、都市型店舗と地域密着型店舗という異なる立地に展開され、今後の銀行の在り方に一石を投じる試みです。
Olive LOUNGEの取り組みの背景と今後の想いを、三井住友銀行(インタビュー当時)の泉純氏と、CCCの堤晃にインタビューいたしました。
銀行の未来像をかたちに──Olive LOUNGE誕生の背景
──Olive LOUNGE誕生の経緯について教えてください。
泉:きっかけは2023年1月、当時SMBCグループの社長を務めていた故・太田純がCCCの増田会長に「これからの銀行」について相談を持ちかけたことでした。CCCからはその数か月後に具体的な提案があり、半年間で一気にプロジェクトが動き出しました。
CCCグループとSMBCグループは2022年10月に資本業務提携を結んでおり、ポイント・決済領域での連携を通じて信頼関係が育まれていたことも、今回の協業を後押しした大きな要因でした。

堤:お話をいただいたとき、まず私たちが強く意識したのは「開かれた銀行」というテーマです。CCCはこれまでにも、書店や家電、図書館など様々な業種で“人の集まる場”をつくってきました。そのノウハウを銀行という領域でも活かすことで、新しい体験が提供できるのではないかと考えました。
泉:私自身、休日に蔦屋書店やT-SITEに足を運んだときに、「こういう場所が銀行になったら素晴らしいな」と感じたんです。オープン後は、利用者からの評価も非常に高く、社内でも新たな可能性を感じています。
“わざわざ行く”から“ふつうにいる”へ──空間コンセプトの核心
──空間づくりで重視されたポイントは?
泉:Olive LOUNGEで最も大切にしたのは、「開かれた場所」であること。銀行というと、どうしても“用事がある人だけが行く場所”という印象が強い。でも、私たちは、もっと日常の中に溶け込む存在になりたいと考えました。
たとえば、店内には誰でも利用できるスペースを設けています。カフェでくつろぐように、ふらっと立ち寄ってもらえる。そんな存在を目指しました。
堤:“わざわざ行く場所”ではなく、“気づけばそこにいる場所”という発想は、私たちが過去に手がけた店舗とも共通しています。Olive LOUNGEの下高井戸店では、学生や親子連れのお客さまなど、地域の人々が自然と滞在する光景が日常的に見られます。まさに構想通りの景色だと思っています。

デジタルの先にある“対面”の価値──Olive構想の本質
──そもそも「Olive構想」とは何を意味しているのでしょうか?
泉:OliveはSMBCグループの新しい総合金融サービスの名称です。デジタルネイティブな世代にも使いやすいスマホアプリを中心に、銀行、クレジット、デビット、ポイントなどを一体化した機能を提供しています。
ただ、私たちは単にアプリの機能強化にとどまらず、「デジタルが発達すればするほど、リアルな接点がより重要になる」と考えました。Olive LOUNGEは、そうした“リアルの価値”を再定義する場でもあるのです。
堤:アプリが進化しても、最後は人と人との信頼で結ばれるのが銀行の本質。Olive LOUNGEでは、その“信頼”の起点となる空間をどうつくるかが問われました。デジタルとリアルのちょうどよい融合点を探るプロジェクトでもあります。
地域に根ざし、人がつながる拠点へ──コミュニティとの関係性
──渋谷と下高井戸、それぞれの特徴と地域との関わりは?
堤:渋谷は来街者が多く、多様な人の動線が交わる場。そこでの店舗は、“銀行の新たな顔”としての役割を果たすべく、開放的で洗練されたデザインにしています。


一方、下高井戸は地域密着型。木目調の温もりある内装にするなど、まちの空気になじむ設計を心がけました。


泉:特に下高井戸では、主婦の方が友人と訪れたり、学生が読書や勉強をしたりと、銀行でありながら人が自然に集う“サードプレイス”のような存在になっています。こうした地域との関係性こそ、銀行がこれから担う新しい役割なのかもしれません。
単なる提携を超えて──共創がもたらす新たな体験
──両社の協業から生まれたものとは?
堤:Olive LOUNGEは単なる提携の成果ではなく、“思想の共有”から始まりました。ブランドの世界観をすり合わせ、空間にまで落とし込む。プロセス全体が“共創”でした。
泉:銀行の常識にとらわれないCCCの発想に、私たち自身多くを学びました。たとえば店舗にシンボルとして置いた「オリーブの木」も、その一つです。金融機関としては珍しいですが、オリーブの木が空間の印象を大きく変えてくれました。

全国へ──Olive LOUNGEの今後の展開
──今後の展望について教えてください。
泉:現在、すでに複数のエリアでOlive LOUNGEを出店しています。今後は、駅近など利便性の高い立地にある既存支店のリニューアルを進めていきたいと考えています。
堤:スピードと品質の両立が問われますが、社会にインパクトを与えるには“ある程度の規模”が必要です。社内でも「Olive LOUNGEに携わりたい」という社員の声が広がっています。

Olive LOUNGEは、単なる店舗のリブランディングではなく、銀行という存在そのものの意味を問い直す試みです。生活の中に自然にある銀行。人が集まり、会話が生まれ、信頼が育まれる場所──Olive LOUNGEは、そんな未来の銀行の原型を示しています。
Olive LOUNGE プロジェクトトップへ戻る