未来へ“繋ぐ”街づくり―― 659邸の新たな暮らしを描く、住宅ブランド「BAUS」の空間デザイン
埼玉県所沢市・小手指駅周辺の住宅と商業の2棟から成る複合開発プロジェクト「 (仮称)所沢市小手指町一丁目計画」。その一角を担うのは、中央日本土地建物株式会社(以下、中央日本土地建物)ほかが手掛ける659戸の大規模分譲マンション「バウス所沢小手指タワー」です。私たちはこのプロジェクトの中で、「バウス所沢小手指タワー」の価値を高める家電・アート・ブックディレクション・空間デザインの領域でご支援をさせていただいています。 (2025.11.7 up)
本記事では、プロジェクトをリードされている中央日本土地建物担当者の城山 真哉さま(以下、城山氏)に、開発の背景や空間づくりへの想い、そして未来への展望について詳しくお話を伺いました。
地域に根差し、未来へ継承される街を目指して
「BAUS」は、住む人が毎日を自分らしくより豊かに暮らすための住まいのブランドです。「感動が育つ住まい。」を実現するために、普遍的な品質・機能・デザインを追求しつつも、独自の革新的要素も融合させ、社会に対してもプラスのインパクトを与える住まいを提案しています。
「 (仮称)所沢市小手指町一丁目計画」は、住宅と商業の2棟から成る複合開発であり、マンション部分は地上29階建て・総戸数659戸という埼玉県下最大規模を誇ります。2027年12月の竣工を目指し、2028年3月からの入居開始を予定しています。加えて、商業棟は2026年11月に竣工し、2026年12月に開業予定となっています。
※ バウス所沢小手指タワーホームページに記載

長年にわたり都市開発や住宅事業に取り組んできた中央日本土地建物が、「小手指」という土地に込めたのは、地域とともに成長し、次世代へと繋がる街づくりへの強い想いでした。駅近でありながらも緑に囲まれた環境を活かし、家族の時間や個人の趣味、地域との関わりなど、多様な暮らしが調和する住宅を目指しています。
城山氏:これまでも大規模マンションの共同開発には関わってきましたが、当社がこのような規模の開発を主導するのは今回が初めてです。それだけに、我々にとっても非常に重要なプロジェクトとなっています。かつて地域で長年親しまれていた商業施設「西友」があった場所に、再び新たな命を吹き込むことになります。街の顔として広く愛されてきた場所であるからこそ、新しいマンションや施設も地域の方々に愛されてほしい。単なる不動産開発ではなく、まちづくりの視点で取り組んでいます。
その想いを体現する象徴的な取り組みが、敷地内に設けられるパブリックスペースです。ここでは地元に住む方々と新たな住民が交わるマルシェの定期開催や、催事など要望がある際には貸し出しも予定されており、コミュニティ活性化や、街のにぎわい創出を促す場として期待されています。
また、従来の植生や動物の生態系への配慮として、ビオトープを目指した緑地づくりにも注力。環境配慮型設計認証「ABINC」も取得し、自然と人が共生する暮らしを志向しています。
TSUTAYA BOOKSTOREからインスピレーションを受け、共創に
「バウス所沢小手指タワー」は、共用空間の価値を高めることにも大きな注力がなされています。その背景には、所沢市内の他マンションとの徹底した比較・調査がありました。
城山氏:他の近隣タワーマンションと比較し、共用施設に力を入れることで、独自性を追求したいと感じました。多くのご入居者さまが集まる場ですから、暮らしのなかで自然に交流が生まれ、ご入居者さま自身が「この場があって良かった」と思えるようなサードプレイスがあると、心地良い空間になるのではないかと考えました。
現地視察を重ねるなかで、CCCが手掛ける「TSUTAYA BOOKSTORE グランエミオ所沢」に訪れた際、空間づくりという視点でインスピレーションを得ました。店内の本を見るスペース、そしてカフェ席からテラス席に至るまで、幅広い世代の方々が思い思いに利用されていて、その場を楽しんでいるように感じられました。こういった空間をマンションの中でつくり上げるべきではないかと感じ、すぐにプロジェクト関係者へ提案しました。
そうして、蔦屋書店について調べていくなかで、「書店がなかった街において、待望のお店であった」という記事が目に留まりました。周辺に大きな書店がないという環境は小手指駅周辺にも通ずるものがあり、その場所に本と融合する居心地の良い空間をつくることができれば、ご入居者さまにも日常的に利用される共有施設となり、よりご自身が暮らす住まいに愛着を持てるのではないかと思いました。
実際にCCCグループへご相談させていただいてからは、単に本を置くだけでなく、選書や空間設計までトータルに提案いただける取り組み姿勢に非常に魅力を感じ、一貫性を持った住宅づくりが可能であることに大きな価値を見出し、正式に依頼することを決定しました。
共用空間は、生活を彩る体験を提供する場に
今回、私たちにご依頼いただいたのは、以下の領域です。
• ライフスタイルに沿った家電の提案
• 共用部のアート選定・設置
• ブックディレクションでの読書体験設計
• 自分時間を快適に過ごせることを目的とした空間全体のディレクション
城山氏:共用部は、ご入居者さま以外のゲストの方にも利用いただく機会が多いからこそ、誰かを招きたくなる空間であるべきだと考えています。そのため、パーティールームには埼玉県初導入となるWe Proudly Serve Starbucks® コーヒープログラム対応のセルフサーバーや、住民が楽しめるようビリヤード・卓球設備を設置するなど、工夫を重ねています。



これらはすべて、暮らしにどれだけ心の豊かさを届けられるかという観点で選ばれた要素です。たとえば、アートやブックディレクションは、ご入居者さまの感性を刺激し、日常に小さな気づきやインスピレーションをもたらす仕掛け。家電は使いやすさだけでなく感動的な体験を提供する機能としての視点からセレクトされています。
コミュニティが根づく場所へ
2028年3月(予定)の入居開始時には、千人規模の新しい住民がこの街に加わります。まさに地域の風景そのものが変わる転換点です。
最初は事業者が主導して開催されるイベントや取り組みも、いずれは住民によって自走され、次第に地域コミュニティの中心へと育っていく。そんな未来を描きながら、プロジェクトは着実に進行しています。
城山氏:私たちは、ご入居者さまや地域で暮らす住民、そして来訪者までの全ての方々が心地よく過ごせる空間と体験を提供し、新しいライフスタイルを提案します。こうした空間設計を通じて、ご入居者さまが自然に地域に溶け込み、地域で暮らす方々とともに街を育てていける拠点として、本プロジェクトが機能していくことを目指しています。
そして、未来へとつながる場所として、地域に長く愛される存在となることを心より願っています。
