
データと共創で導く百貨店の新コンセプト「すごす。百貨店」 デパートリウボウ
CCCMKホールディングスと株式会社リウボウインダストリー(以下、リウボウ)はデータと独自性を軸に、百貨店の未来を再定義するコンセプトブックの制作に取り組みました。今回は、制作に至った背景や完成までの経緯、今後の活用方法などについてご紹介します。
Tポイントとリウボウ
沖縄県を拠点とするリウボウグループは、2015年5月に百貨店業界として初めてCCCのTポイント(現:Vポイント)を導入し、デパートリウボウやリウボウストアなどの店舗をはじめ、2023年リリースした「りうぼうネットスーパー」でもVポイントが貯まる・使えるサービスを提供しています。またVポイントデータを活用した市場調査やプロモーション、企画開発など、データべースマーケティング領域においても連携し、地域住民のお客さまはもちろん、観光客へのアプローチにもVポイントデータを活用されています。

最高売上からコロナ禍へ、現状認識への危機感
2018年に過去最高売上を記録したデパートリウボウ。しかしその直後にコロナ禍が到来し、TVCMや新聞折込チラシなどのマス広告を大幅に縮小せざるを得ず、売上が大きく落ち込みました。その後、県内観光が回復傾向にある中で、2024年度には改めてDM送付などの集客施策を再開しましたが、期待したほどの売上回復には至らず、社内には強い危機感が生まれていました。
株式会社リウボウインダストリー 代表取締役社長 親川 純 氏
「コロナの影響を元に戻すという話ではなく、現状の市場環境や消費者インサイトを再認識する必要性を痛感しました。そこで外部機関に依頼して、以前ご利用いただいていたお客さま(離反顧客)とこれまで接点のなかったお客さま(未利用顧客)にWebアンケートとインタビュー調査を実施しました。その結果を全従業員がしっかりと理解し、共通の方向性を持って日々の業務に取り組むために、CCCMKホールディングスより提案があったコンセプトブックの手法が非常に有効だと感じました」

Vポイントデータを活用した新しい百貨店コンセプトの共創
コンセプトブックの作成にあたり、先に実施されていた外部調査だけでなく、約7,000万人を有するVポイントのデータベースを活用し、幅広い消費者に対するマーケティングリサーチも実施しました。優良顧客のコロナ前後の購買変化や、沖縄初上陸ブランドのPOP UP 開催前後におけるライトユーザー(普段、来店しない客層)の流入、沖縄旅行客からの認知度など、それまで肌感覚でしか掴めていなかった消費者動向やインサイトのファクトデータを分析し、「現在デパートリウボウをご利用されている方」、「デパートリウボウをご利用いただいていない沖縄県内の方」、「観光で沖縄に来られる方」の3つのターゲット層に合致したリウボウの独自性を表現するコンセプト「すごす。百貨店」を創り上げました。その後、コンセプトに基づいたターゲット顧客の再定義や百貨店としての価値の再確認を両社間ですり合わせ、根拠となるファクトデータの見せ方も調整しながら、コンセプトブックを作り上げていきました。


親川 氏
「2015年のTポイント導入から10年間にわたる利用状況の変化を細やかに分析し、確かなデータで改めて示していただけたことで、納得感を持ってコンセプト設計を進められました。また、このプロセスを通じて、弊社会長・糸数剛一が以前より大切にしてきた『競合に打ち勝つためには独自性が不可欠』という経営理念の妥当性についても、客観的なデータによる裏付けが得られました。社員一同がリウボウの行動指針として共感していた考え方でもあり、今後の取り組みに向けた力強い後押しとなりました」
“唯一無二の百貨店”を象徴するコンセプトブック

最終的には、「コンセプトパート」と「エビデンスパート」の二部構成で製本されました。「コンセプトパート」ではキャッチコピーやロゴマークなどを用いてコンセプトを視覚的に表現し、ステークホルダーへのプレゼンテーションにも展開しやすい構成に仕上げました。一方、「エビデンスパート」では、マーケティング調査や購買データに基づく分析結果が収録されており、日々の業務の中で従業員がデータに基づいた企画や商品開発に活用できる内容になっています。
親川 氏
「沖縄の海を背景にコンセプトのキャッチコピーを発信するデザインは、沖縄の我々にしかできない表現だと感じました。常々社内でも重視されてきたデパートリウボウの独自性や、“唯一無二の百貨店”としての在り方が視覚的に象徴されているようで、大きなインパクトがありました。コンセプトブック全体に対しても、社内からはレイヤーごとにさまざまな反応がありました。普段データに触れる機会の少なかった現場に近いメンバーからは『こういうことが課題だったのか』と新たな気づきが生まれ、中間層からは『では、どう取り組んでいくべきか』といった声があがるなど、コンセプトブックによって可視化された現状の課題感や進むべき方向性について、具体的な議論が始まるきっかけとなりました」
コンセプトの浸透から実行へ、リウボウにしかできない仕掛けづくり

今年で77周年を迎えたリウボウグループ。観光地としても国内外の注目度が一層高まる沖縄の地で、これからの80周年、100周年に向けてより顧客価値の高いサービスの提供を目指されています。その中で、CCCMKホールディングスからは、ワンストップソリューションとして、今回のコンセプトブックをもとにした具体的な施策案も提案しており、実現に向けて検討を重ねています。
親川 氏
「コンセプトブックの制作を通じて、自社の課題が改めて浮き彫りとなり、進むべき方向性を再定義することができました。今後は、オンボーディングを含めた従業員教育の中で、日々の業務の指針として浸透させていくとともに、ステークホルダーの皆さまにも当社の強みや想いをより深くご理解いただけるよう、発信力の強化にも活用していきます。引き続きCCCMKホールディングスとは、百貨店らしさを追求したデパートリウボウにしかできない企画や商品の具現化を共に進めていきたいと考えています」