200ヘクタールの総合福祉公園の未来を描く 神戸市「しあわせの村」持続的な価値づくりへの取り組み

2024年に始動した、神戸市と民間企業各社が連携して、総合福祉ゾーン「しあわせの村」を中心としたまちづくりやコミュニティ活性化を推進する「わんぱーく!プロジェクト」。「しあわせの村」の持続的な未来に向けて、官民連携によるソーシャルインクルージョンの実現に向けた取り組みや活用策の検討、長期的な視点で村の魅力を高める取り組みを実施しています。

今回はプロジェクト参加企業である、株式会社三井住友銀行 法人戦略部 ソリューショングループ ダイレクター 杉山 ひろみ氏、同社 公共・金融法人部 部長 酒井 俊氏、同社 公共・金融法人部 業務推進グループ 石井 智也氏、株式会社乃村工藝社未来創造研究所 インクルーシブデザインLAB 主任 井部 玲子氏、CCC地方創生事業開発部 リサーチ&プランニング 東谷 幸亮の5名にインタビューを実施。プロジェクト発足からイベント開催に至る経緯をはじめ、民間企業の共創による価値創出や、コミュニティ活性化によるまちづくりの裏側についてお話をお伺いしました。
(以下、敬称略)

震災から30年、「しあわせの村」から神戸の魅力を高めるまちづくりに挑戦

--はじめに、「わんぱーく!プロジェクト」が発足した経緯を教えてください。

酒井:
三井住友銀行(以下、SMBC)と神戸市はマザーマーケットとして大正時代から長年にわたり信頼関係を築いてきました。日頃から地域課題についてご相談いただく中で、2023年に「しあわせの村」の再生についてお話をいただきました。「しあわせの村」は開村から35年が経過しており、施設の在り方や今後の方向性が改めて問われる時期にありました。また震災から30年の節目を迎え、財政面でも神戸の魅力を次世代につないでいくための前向きな取り組みを模索されるタイミングでした。その中で、福祉局や建設局、都市局など関係各局より「『しあわせの村』を改めてソーシャルインクルージョンを実現する場所にしてほしい」という熱いご要望をいただき、当行としてもぜひお力になりたいと考え、お引き受けしました。

株式会社三井住友銀行 公共・金融法人部 部長酒井 俊氏
株式会社三井住友銀行 公共・金融法人部 部長酒井 俊氏

杉山:
SMBCでは、2023年の中期経営計画で社会的価値の創造を重視する方針を掲げていたほか、不動産を起点とした社会課題解決を目的とした「まちづくりプロジェクト」を立ち上げるなど、社内でも社会貢献に重点を置いた取り組みが加速していました。一方で、まちづくりや地域コミュニティの活性化においては、金融や不動産業界のコネクションだけでは解決できない課題も多いため、幅広い業種業界の企業各社との共創が必要不可欠でした。そこで、乃村工藝社をはじめ、兼ねてよりお付き合いのあった企業にお声がけを始めました。

井部:
乃村工藝社では、2022年に未来創造研究所を発足し、本業である空間づくりを通じて、地域コミュニティのデザインやインクルージョンなど、社会課題の解決に向けた取り組みを推進してきました。そうした折に、SMBCより本プロジェクトを紹介いただき、「とにかく、現地を見に来てください」とお声がけをいただきました。実際に現地で地域住民の皆さまが思い思いに過ごされている様子を目の当たりにし、長年にわたり地域に愛されてきた「しあわせの村」を核に、まちづくりという大きな視点から新たなコミュニティ創出に貢献したいと思い、本プロジェクトへの参画に至りました。

株式会社乃村工藝社 未来創造研究所インクルーシブデザインLAB 主任 井部 玲子氏
株式会社乃村工藝社 未来創造研究所インクルーシブデザインLAB 主任 井部 玲子氏

杉山:
長期的な取り組みだからこそ、施設の魅力や利用者の雰囲気を実際に感じていただくことで、「しあわせの村」の魅力づくりやまちづくりに共感していただけると考えました。その後、参加企業同士の横のつながりを活かしながら共感の輪を広げ、現在では多様な企業の皆さまにプロジェクトへ参画いただいています。

コンセプト設計からイベント開催、共創によるソーシャルインクルージョンの実現

--参加企業が増える中で、どのようにプロジェクトを推進していったのでしょうか?

杉山:
2024年春ごろに、乃村工藝社やCCC、エイチ・ツー・オー リテイリング株式会社、株式会社ジャクエツ、株式会社ワールドインテックなどコアメンバーによる定例会議が始まりました。「『しあわせの村』をどういった場所にしていきたいか」をゼロベースからディスカッションするなかで、企業の垣根を超えた議論から、想像以上に多様なアイデアや表現が沢山生まれました。なかでも、乃村工藝社の提案から始まった「しあわせの村を、世界で一番わんぱくなONE PARKにする。」というコンセプト設計がプロジェクトを大きく前進するきっかけになりました。

株式会社三井住友銀行 法人戦略部 ソリューショングループ 杉山 ひろみ氏
株式会社三井住友銀行 法人戦略部 ソリューショングループ 杉山 ひろみ氏

井部:
200ヘクタールの広大な敷地を持つ「しあわせの村」を、一度で変化させることは難しいと考えていました。そこで、目標を短期と長期に分けてコンセプト整理を進めました。また「誰のための公園なのか」を意識し、長らく「しあわせの村」をご利用してきた地域住民の皆さまにとってもより魅力的な公園に磨き上げるべく、ソーシャルインクルージョンをテーマに「しあわせの村」の潜在的な利用価値を最大限引き出すことを議論しました。

杉山:
コンセプト設計から誰もがイメージができる方向性を見いだせたことで、プロジェクト全体の指針が明確化されました。それを軸に「子どもも大人もお年寄りも。ここならみんなわんぱくに。みんなが交わるわんぱーく。」の合言葉を掲げ、各社から多彩な提案をいただきました。その結果、2024年10月に「みらいの文化祭」、2025年11月に「ミュージックパーク」のイベントを実施することができました。

民間企業の自由な発想力で、「しあわせの村」の新しい魅力を創出

--イベントを実施するにあたり、各社はどのような役割を果たしたのでしょうか? 

井部:
乃村工藝社は「みらいの文化祭」で障がいの有無に関わらず、誰もが自分らしく参加できるイベントとして、アーティストと一緒にステンシル技法でフラッグをつくるワークショップを実施しました。当社の空間デザイン力を活かした試みで、未来創造研究所の知見を新しいフィールドで実践することができ、運営側としても非常に多くの学びがありました。イベント当日も事前に用意していた材料がかなり早い段階でなくなってしまうなど、想定を超えた好評ぶりでした。

ワークショップ
ワークショップ

東谷:
CCCは全体のプロデュースを担い、コンセプトを利用者の体験として形にするためのプランニングを行いました。各社のリソースについて理解を深めながら、強みを掛け合わせることで、一つのイベントとして組み立てていったプロセスは、CCCがこれまで企画してきた「BOOK & CAFE」や「SHARE LOUNGE」における、異なるアイデアや機能を編集し、ひとつの場として価値に変えていく、という考え方とも重なる部分が多いと捉えています。

CCC地方創生事業開発部 リサーチ&プランニング 東谷 幸亮
CCC地方創生事業開発部 リサーチ&プランニング 東谷 幸亮

杉山: 
プロジェクト開始当初は各社の明確な役割分担はありませんでした。しかし、コンセプトを基に定例会議を重ねていく中で、各社が得意分野において積極的に提案していただけたことで、適材適所で魅力あふれるコンテンツを準備できました。その中で、CCCには全体のプランニングを担い、各社のアイデアや強みを整理・編集しながら、一つのイベントとして成立させる役割を果たしていただきました。今では、東谷さんはみんなから“座長”と呼ばれています(笑)。

--実際にイベントに訪れた地域住民の皆さまの反応はいかがでしたか?

杉山:
文字通り、“幸せな空間”を創出することができました。特に、ジャクエツが敦賀から搬入したインクルーシブ遊具には、朝一番から行列ができるほどの盛況ぶりで、障がいを抱えた子どもたちもみな一緒に混ざり合って遊んでいた光景がとても印象的でした。そんな地域住民の皆さまが“ごちゃ混ぜ”になってイベントを楽しんでいる姿をご覧になって、神戸市の方からも「こんな光景を求めていました」とお言葉を頂戴しました。

「ミュージックパーク」インクルーシブ遊具の設置
「ミュージックパーク」インクルーシブ遊具の設置

東谷:
「しあわせの村」としても、これまでの活動を見つめ直しながら、新しい関わり方を模索しました。神戸市と連携し、ひきこもり支援室の取り組みの一環として、当事者の方々に会場設営や運営の一部を担っていただくなど、多様な立場の人が関われる場づくりに挑戦しました。
さらに、「しあわせの村」が大切にしてきた理念を軸にさまざまな背景を持つ人たちが表現する機会として、
パフォーマンスやバンド演奏といったコンテンツを取り入れ、表現する側・楽しむ側の垣根を越えて、多様な人が同じ空間を共有できる体験を生み出しました。
こうした取り組みを通じて、「しあわせの村」が目指してきたソーシャルインクルージョンの考え方や、その実践の一端に触れていただく機会になったのではないかと思います。

井部:
単純な来訪者数ではなく、多様なバックグラウドをお持ちの方々が混ざり合って楽しめる空間を実現できたことはコミュニティづくりにおいて大きな価値があります。実際にお会いした家族連れの方からは「こんなイベントは年に1、2回ほどしかない」というお声もあったので、今回のような取り組みを継続的に実施していくことが「しあわせの村」のバリューアップにつながると感じています。

「ミュージックパーク」イベントの様子

共創の価値とは?解決力の増幅、ソーシャルインパクトの拡大、ネットワークの拡張

--イベントを実施するにあたり、各社はどのような役割を果たしたのでしょうか? 

井部:
各社の知見が組み合わさり、増幅していくことが共創の大きな価値だと思います。世の中的に社会課題解決やコミュニティづくりへの注目度が高まっている一方で、それぞれの企業でも「何をどう進めればいいのかわからない」という課題感があったように思います。しかし、本プロジェクトでは、そんな悩みを1社で抱え込むのではなく、様々な企業のアイデアを結集させることで、スピード感をもってプロジェクトを推進することができました。

石井:
各社との共創を象徴する取り組みの一つに、プレスリリースの発信が挙げられます。単なるイベントのお知らせではなく、これだけの企業が集い、神戸市を舞台にどのような想いでプロジェクトに関わっているのかを、目に見える形で伝えられたことで、ソーシャルインパクトの創出に繋がりました。実際に、リリース後には東京の企業からもお問い合せをいただき翌年のイベントに協賛していただくなど、社内はもちろん社外からも大きな反響がありました。

株式会社三井住友銀行 公共・金融法人部 業務推進グループ 石井 智也氏
株式会社三井住友銀行 公共・金融法人部 業務推進グループ 石井 智也氏

東谷:
従来の仕事ではなかなかお会いする機会のなかった企業とご一緒できたことも大きな価値でした。お互いのリソースだけでなく価値観や人柄まで、深くそれぞれの企業とネットワークを形成できたことは、今後のビジネスにおいても大きな財産になると感じています。

地域のプレイヤーを巻き込んだ持続的なまちづくりへ

--「わんぱーく!プロジェクト」の今後の展開について教えてください。

杉山:
これまでのイベント実施や広報活動を通じて、さまざまな事業者の方に現地まで足を運んでいただく機会が増えてきました。今後は、そうしたつながりを大切にしながら、より多くの企業や関係者の皆さまに関心を持っていただき、お力をお借りしつつ、取り組みの幅を広げていきたいと考えています。その中でも引き続き、「わんぱーく!プロジェクト」のコンセプトを骨子に、「しあわせの村」のブランディングやエリアマネジメント、ネットワーク形成を段階的かつ持続的に推し進めていきたいです。

石井:
一方で、地域の出店者さんへの認知拡大も大きなテーマです。2026年3月のイベントでは、地元・神戸市北区の事業者も初めてプレイヤーとしてご参加いただく予定ですが、このように企業と地域のネットワークが広がっていくことは事業者誘致の視点からも大きな価値があり、今後も、民間事業者の柔軟な発想力を活かして、個人商店や大学など地域のプレイヤーの方との取り組みが拡大していけばと願っています。

東谷:
CCCとしては、これまで生活提案のプラットフォームづくりを通じて培ってきた知見を基に、「しあわせの村」の取り組みを関係者とともに深めながら、年齢や障がいの有無、立場の違いにかかわらず多様な人が同じ場を共有し、それぞれの関わり方で参加できる環境づくりに取り組んでいきたいと考えています。
その中で、より多くの企業や地域住民の皆さまが関わる機会を広げ、コミュニティの活性化を通じて、「しあわせの村」の価値向上に貢献していきたいです。

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