公共施設の運営から、街の自走へ。シャッター商店街を再生した「共創型タウンマネジメント」

「施設だけが賑わうのでは意味がない。その賑わいを街へ波及させてほしい」。2018年に開業した「徳山駅前賑わい交流施設及び徳山駅前図書館」(山口県周南市)の指定管理者としてCCCが周南市から託されたのは、公共施設の運営だけではなく、その先にある中心市街地全体の活性化でした。

開業から約10年。駅前に生まれた賑わいは、かつて多くのシャッターが閉ざされていた商店街「中央街」へと広がり、わずか1年半で5店舗が新たにオープン。さらに現在では、地域プレイヤー自らが企画や活動を生み出す動きも始まっています。

公共施設を起点に、どのようにして街の価値を高め、持続的なタウンマネジメントを実現してきたのか。

行政の立場から街の基盤づくりに従事した周南市 職員 ※現 地域振興部長 上野 貴史氏。官民の連携でエリアの舵取りを担う周南市中心市街地活性化協議会 タウンマネジメント担当 有吉 一男氏。空き店舗の再生から中央街の再活性化に取り組む三星合資会社 代表社員 石田 俊介氏。1号店の出店で新たな賑わいの灯を点した「Suzume Stand」オーナー 浜松 智也氏。そして、徳山駅前図書館を拠点に民間のノウハウで人流を創出するカルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社 ソーシャルデザイン事業本部 山中 憲治の5名に、その舞台裏と、行政と民間がともに描く地方創生の新しい可能性について伺いました。(2026.08.27up)

公共施設の賑わいを、街の価値へ

——周南市は、「徳山駅前賑わい交流施設」の整備にあたり、CCCにどのような役割を期待していたのでしょうか。

上野 貴史氏(周南市 職員 ※現 地域振興部長):
徳山駅前の再整備は、1999年11月策定の「(旧)徳山市中心市街地活性化基本計画」に記載されてから、20年近く議論が続いてきた大きなプロジェクトでした。中心市街地の活力低下が進むなかで、私たちが目指していたのは新しい施設をつくることではなく、街全体の価値を再び高めていくことでした。

そのためCCCに「徳山駅前賑わい交流施設」の指定管理をお願いするときにお伝えしたのは、「施設単体の成功ではなく、ここで生まれた賑わいを周辺エリアへ波及させてほしい」ということでした。施設だけが賑わっても、本当の意味での街づくりにはつながりません。駅前を起点に、人の流れや新しい挑戦を街へ広げていくことを期待していました。

公共施設の運営から、街の自走へ。シャッター商店街を再生した「共創型タウンマネジメント」の説明画像です
周南市 職員 ※現 地域振興部長 上野 貴史氏

有吉 一男氏(周南市中心市街地活性化協議会 タウンマネジメント担当):
周南市には、行政だけでなく民間も含めて一緒に街づくりを考える風土が根付いています。周南市中心市街地活性化協議会の「タウンマネジメント会議」は16年にわたって継続していますし、「徳山駅前賑わい交流施設」の開業前から「街と駅との連携会議」も続けてきました。

特徴的なのは、それらの会議を通じて行政、商工会議所、事業者、市民など、立場の異なる人たちが継続的に顔を合わせていることです。日頃から情報共有や対話を重ねているので、新しい取り組みが生まれたときにも協力しやすい関係性ができていました。

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周南市中心市街地活性化協議会 タウンマネジメント担当 有吉 一男氏

人と人をつなぐプラットフォーム

——CCCは、周南市での賑わいづくりや公民連携にどのように向き合ってきたのでしょうか。

山中 憲治(CCC ソーシャルデザイン事業部):
私たちは施設運営そのものをゴールとは考えていません。「選べる未来をみんなでつくる」というCCCソーシャルデザイン事業部のビジョンのもと、多様な人々が出会い、新しい活動が生まれるプラットフォームになることを目指しています。

そのために私たちが意識していたのは、「徳山駅前賑わい交流施設」を地域の人や挑戦したい人たちが出会うハブにすることでした。地域には必ず、その街を良くしたいと考える担い手がいます。私たちは、そうした人たちを見つけ、つなぎ、一歩を踏み出しやすい環境を整えることを大切にしてきました。新しく施設を建てるだけでなく、既存の建物のリノベーションなど、幅広い選択肢で地域に根ざした企画を実現していくこともそのひとつです。

施設で生まれた人の流れや熱量を街へ広げながら、ここで培った経験や人脈を生かして連携会議のメンバーや街の挑戦者たちが活躍していく——そんな未来を、地域の方々と対話を重ねながら共につくっていきたいと考えています。

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CCC ソーシャルデザイン事業部 山中 憲治

——「徳山駅前賑わい交流施設」の開業後、来館者数は1日平均約7,000人を記録し、中心市街地の歩行者等通行量や新規出店数も大きく伸びました。当初周南市が期待した“賑わいの波及”が数字の上でも現れ始めていましたが、長年タウンマネジメントを担ってきた立場から見て、施設は街にどのような変化をもたらしたのでしょうか。

有吉氏:
非常に大きな変化があったと思います。人が集まる場所ができたことで、街に新しい刺激や文化が生まれました。「周南 蚤の市」のような以前は見られなかったイベントも増え、駅周辺の雰囲気そのものが変わってきたと感じています。

また、子育て世代やベビーカーを押したご家族の来街が目立って増えました。公共施設が賑わうことで人々の行動変容が起き、街全体への愛着や接点づくりにつながっていると実感しています。

さらに印象的だったのが、「街を自分ごととして考える人」が増えたことです。施設をきっかけに新しい挑戦者が現れ、その方々が地域の活動に積極的に関わるようになりました。その熱量が、後に中央街で起きる新たな挑戦にもつながっていったのだと思います。

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「周南 蚤の市」の様子

プレイヤーが生まれる「共創」の土壌

——中央街で出店支援の取り組みを始めた背景を教えてください。

石田 俊介氏(三星合資会社 代表社員):
私は不動産賃貸業で2016年に周南市へ移住し、中心市街地に住みたいと思う人を増やしたいという想いから「タウンマネジメント会議」に参加しました。その頃の中央街は半分以上の店がシャッターが閉まっている状態でしたが、地域の皆さんから昔の賑わいについて話を聞くたびに、「シャッターが開いた景色を見てみたい」と強く思うようになったんです。

そこで始めたのが、空き店舗を一時的に開けてイベントを行う「とくやま夢横丁」でした。この取り組みを通じて、地域の皆さんや地権者の方々と対話を重ね、この場所の可能性を一緒に体感してもらうことからスタートしました。
最初は批判的なご意見もありましたが、一軒一軒挨拶に伺い、イベントのたびに顔を合わせるなかで少しずつ信頼関係が生まれました。その結果、「それだけ熱心にやるなら、この店舗を引き継がないか」という声をいただき、1軒目の出店者探しにつながっていきました。

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三星合資会社 代表社員 石田 俊介氏

山中:
石田さんから「中央街で新しい挑戦をしたい人を探している」と相談を受けた時に真っ先にご紹介したのが、浜松さんでした。彼が手掛けた立ち飲み屋「Suzume Stand」は、中央街における新たな出店の象徴的な事例になりました。その成功が周囲にも波及し、その後の出店につながっていったと感じています。

CCCは公共施設の運営を通じて日常的に地域住民や事業者と接点を持つことができます。そのネットワークを活用し、地域で挑戦したい人、空き店舗を所有する人、行政、商工会議所など、それぞれが持つ情報や想いをつなぎ、人材や地域資源を結び付けられる点が私たちの強みだと考えています。

1年半で5店舗が出店。街に起きた静かな地殻変動

——出店者の立場から見て、中央街にはどのような魅力がありましたか。

浜松 智也氏(Suzume Stand オーナー):
駅から近く、人の流れがあることはもちろん魅力でした。ただ、実際に出店を決めるうえで何より大きかったのは、「何かあったときに相談できる環境やヒト」が整っていたことです。石田さんや山中さんをはじめ、行政の方々との距離も近い。補助制度のことや地域との関わり方、イベントの進め方まで気軽に相談できる安心感がありました。

また、私たちの世代は賑わっていた頃の商店街を知りませんが、中央街のレトロな空間や人と人との物理的な距離の近さに強い価値を感じています。
SNSでの付き合いに少し疲れを感じている中で、自然な会話やリアルな交流が生まれる。自分たちのアイデア次第で街の風景を変えていける余白や自由度の高さが、「ここで挑戦したい」と考える若い世代を惹きつけているのだと思います。

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Suzume Stand オーナー 浜松 智也氏

——その後、中央街には1年半で5店舗がオープンしました。この波及効果をどう捉えていますか。

有吉氏:
最初のチャレンジが成功したことが大きかったと思います。浜松さんのお店に若い人が集まり、賑わう姿を見たほかの地権者の方々が「うちの店舗も、若い人たちが夢を叶える舞台にしてほしい」と前に動き始めました。
「徳山駅前賑わい交流施設」ができて以降、街を真剣に考える人が明らかに増えました。施設を起点に新しい挑戦者が現れ、その方々が街に対する当事者意識を持ち始めていることが、1年半で5店舗という連鎖を生んだのだと思います。

浜松:
街の人たちの意識が変わってきているのを感じています。昔から商売をされている方々も、新しいお店を応援してくださいますし、私たちも既存のお店から学ぶことがたくさんあります。世代や立場を超えた交流が生まれ、中央街全体がひとつのチームのようになってきている感覚があります。

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Suzume Stand

山中:
ただ店舗を増やすことではなく、その先にある「街の賑わいや温もり」を育むことこそが私たちの願いでした。いま中央街では、店舗オーナーのみなさんがご自身のアイデアでイベントを立ち上げ、商店街の魅力を生き生きと発信されています。
誰かに言われて動くのではなく、「この街をもっと良くしたい」と思う地域の皆さん自身が主体となって街を動かしている。中央街で起きている変化は、まさにそうした“街の自走”が始まっている証だと考えています。

行政と民間が共創する、これからの地方創生

——人流や新規出店が生まれ、駅周辺では地価上昇や再開発の進展など、エリア価値の向上も見られるようになりました。こうした成果を踏まえ、行政と民間が連携して地域の自走を実現していくためには、今後どのような取り組みが必要だとお考えですか。

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上野氏:
行政だけで地域課題を解決することはできません。一方で、民間だけでも街全体を動かしていくことは難しいと思います。重要なのは、それぞれが持つ強みを生かしながら共通の目標を持ち、同じ方向を向いて取り組むことです。
周南市では、公共施設整備や制度設計といった行政の役割に加え、CCCをはじめとする民間事業者や地域のプレイヤーが挑戦しやすい環境づくりを進めてきました。その積み重ねが、今の変化につながっていると感じています。
今後も、若い世代が地域に残りたい、あるいは一度外に出ても戻ってきたいと思えるような選択肢を増やしながら、多様な挑戦が生まれる街を目指していきたいと思います。

山中:
私たちが周南市で取り組んできたのは、施設を運営することだけではなく、施設を起点に人と人をつなぎ、新しい活動や事業が生まれる環境をつくることでした。
地域によって課題や資源は異なります。しかし、どの地域にも「この街を良くしたい」と考える人がいます。私たちの役割は、そうした人たちが出会い、活動が広がり、それが次の世代へ受け継がれていく仕組みをつくることです。
私たちが目指しているのは、行政やCCCが動かし続ける街ではなく、地域自らが動き続ける「街の自走」です。周南市で生まれている変化は、そのひとつの形だと考えています。

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おわりに——世代を超えてつながる、これからのストーリー

「徳山駅前賑わい交流施設」を起点に始まった変化は、今や行政やCCCだけが生み出しているものではありません。中央街では、新たな店舗オーナーが挑戦し、長年街を支えてきた人たちがその人たちを応援する。そんな循環が少しずつ日常になり始めています。最後に、この場所を見守ってきた商店街組合の視点、そしてこれから新たに飛び込むチャレンジャーの視点から、それぞれの感じる中央街の変化と未来についてお話を聞きました。

── 長年この街を見守ってきた立場、そして新しく飛び込む立場から、中央街の変化をどのように感じていますか?

安堂 正修氏(丸安精肉店 中央街商業協同組合 理事長):
ここは僕が生まれ育った街で、店を継いでからも30年になります。一時期はシャッターが目立ち「時代の流れには逆らえないのか」と寂しさを感じたこともありました。ですが、三星の石田さんや「Suzume Stand」の浜松くんをはじめ、若い人たちが諦めずに灯りを点し続けてくれたおかげで、今では奇跡のように若い店が増え、夜の賑わいが戻ってきました。
シャッターが閉まったままより、若い人たちが挑戦して街を明るくしてくれる方がずっといい。「昼間の賑わいをどう作るか」という次の課題もありますが、それも前向きなステップです。神野さんのような新しいチャレンジャーが加わり、一緒に次のストーリーを紡いでいけることが本当に楽しみですね。

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丸安精肉店

神野 愛菜氏(ワインスタンドオーナー・2026年末出店予定):
徳山駅裏で営業していた頃から「女性がふらっと立ち寄れて、心地よく過ごせる場所を作りたい」という想いがありました。そんな時に出会ったのが、この中央街のノスタルジックで温かい横丁の雰囲気です。ひと目見て「私がお店をやりたい場所はここだ」と直感しました。
私が提案する「古着×ナチュラルワイン」という空間が、この街のレトロな空気感と溶け込むことで、新しい賑わいを生み出せたらと思っています。長年この街を守り続けてこられた安堂さんたち先輩方が温かい土壌を作ってくださったからこそ、私たちも安心して飛び込むことができます。大好きなこの商店街とお客さまに恩返しができるよう、ここから新しい風を吹かせていきたいです。

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ワインスタンドオーナー 神野 愛菜氏
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